和文の阿弥陀経

浄土宗で特に大切にする三つの経典があります。その三つは『無量寿経』『観無量寿経』『阿弥陀経』というお経で、総称して「浄土三部経」と呼びます。八万四千の法門といわれる無数のお経の中で、阿弥陀佛のお姿とお徳、西方極楽浄土の様子、念佛往生について説き示されたものです。

法要では和訳した阿弥陀経をよく拝読します。美しく荘厳された極楽浄土で説法されている阿弥陀さま、そしてそのお膝元で仏道修行されるご先祖さまやご縁あった方々に想いを馳せながらお読みください。

浄土三部経 佛説 阿弥陀経

姚秦（ようしん）の三蔵法師・鳩摩羅什（くまらじゅう）が訳したてまつる

かくの如きをわれ聞きき。一時佛　舎衛国の祇樹給孤独園（ぎじゅぎっこどくおん）にましまして　大比丘衆千二百五十人と倶（とも）なりき。皆これ大阿羅漢（だいあらかん）なり。衆に知識せられたり。

長老舎利弗　摩訶目犍連　摩訶迦葉　摩訶迦旃延　摩訶倶絺羅　離婆多　周利槃陀伽　難陀　阿難　羅睺羅　憍梵波提　賓頭盧頗羅墮　迦留陀夷　摩訶劫賓那　薄拘羅　阿㝹樓駄　かくの如き等の諸々の大弟子なり。ならびに諸々の菩薩・摩訶薩あり。文殊師利法王子　阿逸多菩薩　乾陀訶提菩薩　常精進菩薩　かくの如き諸々の大菩薩および釋提桓因（しゃくだいかんいん）等の無量の諸天大衆（しょてんだいしゅう）と倶なりき。

その時佛　長老舎利弗（しゃりほつ）に告げたまわく。これより西方十万億の佛土を過ぎて世界あり。名づけて極楽という。その国に佛まします　阿弥陀と名づけたてまつる。今現にましまして説法したまう。

舎利弗よ　かの国を何が故ぞ名づけて極楽とする。その国の衆生諸々の苦あることなく　ただ諸々の楽のみを受く。故に極楽と名づく。また舎利弗よ　極楽国土には七重の欄楯・七重の羅網・七重の行樹あり。みなこれ四宝をもて周帀（しゅうそう）し圍繞（いにょう）せり。この故にかの国を名づけて極楽という。また舎利弗よ　極楽国土には七宝の池あり。八功徳水その中に充満せり。池の底にはもっぱら金沙をもって地に布けり。四辺に階道あり。金銀・瑠璃・玻璃をもって合成せり。上に楼閣あり。また金銀・瑠璃・玻璃・硨磲・赤珠・碼碯をもって　しかもこれを厳飾（ごんじき）せり。池の中に蓮華あり　大きさ車輪の如し。青色には青光あり　黄色には黄光あり　赤色には赤光あり　白色には白光ありて　微妙香潔なり。舎利弗よ　極楽国土にはかくの如きの功徳荘厳を成就せり。

また舎利弗よ　かの佛の国土には　常に天楽をなす。黄金を地とせり。昼夜六時に曼陀羅華を雨らす。その国の衆生常に清旦をもって　各々衣裓（えこく）をもって　諸々の妙華を盛りて　他方十万億の佛を供養す。すなわち食時（じきじ）をもって　還りて本国に到りて　飯食し経行（きょうぎょう）す。舎利弗よ　極楽国土にはかくの如きの功徳荘厳を成就せり。

また次に舎利弗よ　かの国には常に種々の奇妙なる雑色の鳥あり。白鵠・孔雀・鸚鵡・舍利・迦陵頻伽・共命の鳥なり。この諸々の鳥　昼夜六時に和雅（わげ）の声を出（いだ）す。その声　五根・五力・七菩提分・八聖道分　かくの如き等の法を演暢（えんちょう）す。その国の衆生この声を聞きおわりて　皆ことごとく佛を念じ　法を念じ　僧を念ず。

舎利弗よ　汝この鳥は　実にこれ罪報の所生なりと思うことなかれ。故はいかん。かの佛の国土には三悪趣（さんあくしゅ）なし。舎利弗よ　その佛の国土にはなお三悪道（さんあくどう）の名もなし。いかにいわんや　実あらんや。この諸々の鳥は皆これ阿弥陀佛の法音（ほうおん）をして　宣流（せんる）せしめんと欲して　変化してなしたまえる所なり。舎利弗よ　かの佛の国土には微風（みふう）吹いて　諸々の宝行樹（ほうごうじゅ）および法羅網（ほうらもう）を動かして　微妙（みみょう）の声を出（いだ）せり。たとえば百千種の楽を同時に倶になすが如し。この声を聞く者は皆　自然に念佛・念法・念僧の心を生ず。舎利弗よ　その佛の国土にはかくの如きの功徳荘厳を成就せり。

舎利弗よ　汝が意（こころ）においていかに何が故ぞ　かの佛を阿弥陀と名づけたてまつる。舎利弗よ　かの佛の光明無量にして　十方の国を照らすに障碍（しょうげ）する所なし。この故に名づけて阿弥陀となす。また舎利弗よ　かの佛の寿命およびその人民も　無量無辺阿僧祇劫なり。故に阿弥陀と名づく。舎利弗よ　阿弥陀佛の成佛よりこの方（かた）　今において十劫（じっこう）なり。また舎利弗よ　かの佛に無量無辺の声聞（しょうもん）弟子あり。皆阿羅漢なり。これ算数のよく知る所にあらず。諸々の菩薩衆もまたまたかくの如し。舎利弗よ　かの佛の国土には　かくの如きの功徳荘厳を成就せり。

また舎利弗よ　極楽国土に衆生生ずる者は　皆これ阿鞞跋致（あびばっち）なり。その中に多く一生補処（いっしょうふしょ）あり。その数甚だ多し。これ算数のよく知る所にあらず。ただ無量無辺阿僧祇劫（むりょうむへんあそうぎこう）をもって説くべし。

舎利弗よ　衆生聞かん者はまさに発願して　かの国に生ぜんと願ずべし。故はいかん。かくの如き諸々の上善人と倶に一処（いっしょ）に会（え）することを得ればなり。舎利弗よ　少善根福徳の因縁をもっては　かの国に生ずることを得べからず。舎利弗よ　もし善男子・善女人ありて　阿弥陀佛を説くを聞きて名号（みょうごう）を執持（とな）えること　もしは一日・二日・三日・四日・五日・六日・七日　一心不乱なれば　その人命終わる時に臨みて　阿弥陀佛諸々の聖衆（しょうじゅ）とともに　現にその前にまします。この人終わる時　心転倒（てんどう）せずして　すなわち阿弥陀佛の極楽国土に往生することを得ん。舎利弗よ　われこの利を見るが故にこの言（ことば）を説く。もし衆生ありて　この説を聞かん者は　まさに発願してかの国土に生ずべし。

舎利弗よ　われ今阿弥陀佛の不可思議功徳を讃嘆（さんだん）するが如く　東方世界にもまた阿閦鞞佛・須弥相佛・大須弥佛・須弥光佛・妙音佛　かくの如き等の恒河沙数（ごうがしゃしゅ）の諸佛ましまして　各々その国において広長（こうちょう）の舌相（ぜっそう）を出（いだ）して　あまねく三千大千世界を覆いて誠実（じょうじつ）の言（ことば）を説きたまう。汝ら衆生　まさにこの「称讃不可思議功徳一切諸佛所護念経」を信ずべし。

舎利弗よ　南方世界にも　日月燈佛・名聞光佛・大焰肩佛・須弥燈佛・無量精進佛　かくの如き等の恒河沙数（ごうがしゃしゅ）の諸佛ましまして　各々その国において広長（こうちょう）の舌相（ぜっそう）を出（いだ）して　あまねく三千大千世界を覆いて誠実（じょうじつ）の言（ことば）を説きたまう。汝ら衆生　まさにこの「称讃不可思議功徳一切諸佛所護念経」を信ずべし。

舎利弗よ　西方世界にも　無量寿佛・無量相佛・無量幢佛・大光佛・大明佛・宝相佛・浄光佛　かくの如き等の恒河沙数（ごうがしゃしゅ）の諸佛ましまして　各々その国において広長（こうちょう）の舌相（ぜっそう）を出（いだ）して　あまねく三千大千世界を覆いて誠実（じょうじつ）の言（ことば）を説きたまう。汝ら衆生　まさにこの「称讃不可思議功徳一切諸佛所護念経」を信ずべし。

舎利弗よ　北方世界にも　焰肩佛・最勝音佛・難沮佛・日生佛・網明佛　かくの如き等の恒河沙数（ごうがしゃしゅ）の諸佛ましまして　各々その国において広長（こうちょう）の舌相（ぜっそう）を出（いだ）して　あまねく三千大千世界を覆いて誠実（じょうじつ）の言（ことば）を説きたまう。汝ら衆生　まさにこの「称讃不可思議功徳一切諸佛所護念経」を信ずべし。

舎利弗よ　下方世界にも　師子佛・名聞佛・名光佛・達摩佛・法幢佛・持法佛　かくの如き等の恒河沙数（ごうがしゃしゅ）の諸佛ましまして　各々その国において広長（こうちょう）の舌相（ぜっそう）を出（いだ）して　あまねく三千大千世界を覆いて誠実（じょうじつ）の言（ことば）を説きたまう。汝ら衆生　まさにこの「称讃不可思議功徳一切諸佛所護念経」を信ずべし。

舎利弗よ　上方世界にも　梵音佛・宿王佛・香上佛・香光佛・大焰肩佛・雜色宝華厳身佛 ・娑羅樹王佛・宝華徳佛・見一切義佛・如須弥山佛　かくの如き等の恒河沙数（ごうがしゃしゅ）の諸佛ましまして　各々その国において広長（こうちょう）の舌相（ぜっそう）を出（いだ）して　あまねく三千大千世界を覆いて誠実（じょうじつ）の言（ことば）を説きたまう。汝ら衆生　まさにこの「称讃不可思議功徳一切諸佛所護念経」を信ずべし。

舎利弗よ　汝が意（こころ）においていかに何が故ぞ　名づけて「一切諸仏所護念経」とする。舎利弗よ　もし善男子・善女人ありて　この諸仏所説および経の名を聞かん者は　この諸々の善男子・善女人　皆一切諸仏にともに護念せられて　阿耨多羅三藐三菩提（あのくたらさんみゃくさんぼだい）を退転（たいてん）せざることを得ん。この故に舎利弗よ　汝ら皆まさにわが語および諸仏の所説を信受（しんじゅ）すべし。

舎利弗よ　もし人ありて　すでに発願し　今発願し　まさに発願して　阿弥陀佛国に生ぜんと欲せん者は　この諸々の人皆　阿耨多羅三藐三菩提を退転せざることを得て　かの国土において　もしはすでに生じ　もしは今生じ　もしは当に生ぜん。この故に舎利弗よ　諸々の善男子・善女人　もし信ずることあらん者は　まさに発願してかの国土に生ずべし。

舎利弗よ　われ今諸仏の不可思議功徳を称讃するが如く　かの諸仏等もまた不可思議功徳を称説して　しかもこの言をなしたまはく。釈迦牟尼佛よく甚難希有（じんなんけう）のことをなして　よく娑婆国土の五濁悪世（ごじょくあくせ）の劫濁・見濁・煩惱濁・衆生濁・命濁の中において　阿耨多羅三藐三菩提を得て　諸々の衆生のためにこの一切世間難信（なんしん）の法を説く。舎利弗よ　まさに知るべし。われ五濁悪世においてこの難事（なんじ）を行じて　阿耨多羅三藐三菩提を得て　一切世間のためにこの難信の法を説く。これを甚だ難しとなす。

佛この経を説きおわりたまう。舎利弗および諸々の比丘　一切世間の天人・阿修羅等　佛の説きたまう所を聞きたてまつり　歓喜し信受して礼（らい）をなして去りき。

佛説阿弥陀経